有働眞理子研究室 〜ことばの学びと身体性〜

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授業紹介:ゼミ

 つい最近文科省のサイトで、新しく打ち出された文言が目を引きました。
「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告(概要)〜グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言〜」の中で、<改革5.学校における指導体制の充実>として、下記課題が、例えばということで、明記されています。(下線部有働)

小学校における英語指導に必要な基本的な英語音声学、英語指導法、ティーム・ティーチングを含む模擬授業、教材研究、小・中連携に対応した演習や事例研究等の充実、中・高等学校において授業で英語によるコミュニケーション活動を行うために必要な英語音声学第2言語習得理論等を含めた英語学、4技能を総合的に指導するコミュニケーションの科目の充実等を、英語力・指導力を充実する観点から改善することが必要。今後、教員養成の全体の議論の中で検討。

 小中高いずれにおいても英語音声学、中高における英語音声学・英語学と明記されたのは、実は、非常に画期的な出来事と有働は捉えており、クオリティの高い英語力を文科省が目指そうとしていることが想像できます。英語学ゼミでは、学校の英語教育に求められる言語研究の知見にどのようなものがあり、どういった関連性を持つのかを常に意識しながら、興味深い研究テーマを設定していくように心がけます。

大学院

 取り扱う話題の豊富な英語学の中でも、英語と日本語を中心に様々な言語現象を観察しながら、認知科学としての文法理論のあり方について考えることに関心があります。私たちが「ことばがわかる(ようになる)」というのは一体どういうことであるのか、豊かな資料をときほぐして、そのからくりの断片を拾い集めるような考察が好きです。
 そのほか、学校英文法についても興味を持っています。中学校・高校で悪名の高い「英文法」ですが、実はコミュニケーション能力の育成に避けて通れないだけでなく、予想外に役に立つ情報が実際はたくさんある、ということがあまり知られていません。演習やゼミでは、英語そのものの勉強をしながら、学校英文法の改善策について、語学的な見地から積極的に考察するという訓練も行っております。
 「へえー!なるほど!それはおもしろいね!」と言えるような発見について、きちんとした手続きで表現する、というのがゼミ2年間の目標です。学術性への誠意を持って精進するのはもちろんですが、「2年間苦労はあったが、おもしろかった」と思って皆さんが修了できるように、私自身精一杯努力したいと思っております。修論の例を以下に挙げておきます。

【修士論文】
Kishi, Michiko (1995) ‘Towards a Cognitive Model of Resultative Constructions’
Nishita, Masami (1996) ‘The Function and Behaviour of Cleft Sentences’
Yamamoto, Yasuhito (1997) ‘Semantics and Pragmatics of There Constructions in English’
Eto, Hiroaki (1998) ‘The Ground of Negation: The Structure of External Negation’
Okimori, Norihito (1999) ‘A Semantic and Pragmatic Study of the Light Verb Construction in English —with Special Reference to ‘have’—’
Miki, Takayuki (2000) ‘A Study of English Imperatives —with a Focus on the Determination of Illocutionary Forces—
Asada, Masaki (2001) ‘Teaching Subjunctive to Japanese Learners of English: A Linguistic Perspective’
Haruyama, Tadasho (2001) ‘On the Light Verb Construction with ‘give’ ’
Sanada, Hirokazu (2002) ‘A New Perspective on ‘Make-Causative’ in School Grammar’
Osawa, Shinya (2003) ‘A Study of the Comparative Constructions with ‘no more…than’ in School Grammar from a Linguistic Perspective’
Kawanishi, Naoko (2004) ‘Semantics and Pragmatics of the Present Perfect: Towards a Better Explanation for Junior High School Students’
Maeno, Takayo (2005) ‘S Study of Onomatopoeias in English’
Moriwaki, Hanako (2007) ‘The ‘no less…than’ Construction: Semantics and Pragmatics’
Tanaka, Rie (2008) ‘The Meaning and Use of ‘be to’ ’
Tomomoto, Aya (2009) ‘The ‘as〜as’ Construction: Focusing on the Meaning of Equality’
Koike, Nagisa (2010) ‘The Discourse Functions of the English Present Perfect’
Sasada, Taku (2010) ‘The ‘pretty Construction’ in English’ ’
Fuzalov, Ahmadhon (2011) ‘Contractive Study of Uzbek and English Copula: Towards Better Pedagogical Grammar’
Furikado, Harumi (2012) ‘On the Participial Construction in English – With a Special Focus on Syntactic Positions’
Narisawa, Hanaka (2012) ‘Modality of ‘emotional should’’ ’
Ogura, Yuya (2013) ‘A prosodic feature of Japanese learners of English – focusing on sentences beginning with pronouns−
Okamoto, Masao (2013) ‘Analysis of Multi-Party Conversation in Foreign Language Activity’
Masuda, Moe (2913) ‘The Pragmatic Use of ‘but’ ’

学部

 本学は、実習科目が多く、教職に必要な決められたカリキュラムが緻密に組み立てられているため、卒業研究では、これからはじめて教師としてデビューし、子供たちに勉強の方法を学びながら教えなければならない学部生のために、比較的自由度の高いテーマ設定を勧めています。あくまでも、ことばの面白さを追求するという学問の心を忘れずに、面白いと思ったテーマは、たとえ奇抜でも大切にして考えてみるようにしています。最近は音声への関心も高まってきました。大変結構な傾向かと思います。
 「英語学」という分野は、狭義には個別言語としての英語の語法文法研究、広義には、日英対照言語比較も含めて、自然言語全般についての言語学研究を含みます。「ことば」を様々な角度から観察するのが好きな人にとっては大変楽しい研究領域ですが、人に教えるに足る英語力(話せるだけではなく、説明できる知識や基盤、素養等を持っていること)を培うために、語学力の要求水準はやや厳しくならざるをえません。そのうえで、英語そのものの面白さを一緒に共有できれば何よりです。

【これまでの卒業論文】
小林加奈子(2002)「小学校国語教科書におけるオノマトペについて」
中谷真未(2004)「幼児の絵本にみるオノマトペー日英対照の観点からー」
波多英里子(2005)「エアロスミスの歌の魅力ー音韻分析の視点からー」
辻美香 (2010)「Frog and Toad Are FriendsにおけるWh疑問文のイントネーションと意味」
樽本紗弓 (2012) 「否定疑問文における談話機能について」
三河英樹 (2013) 「物語の中のthere構文」
折田美穂 (2013)「完了形の意味と談話機能ー映画The Wizard of Ozの対話表現事例を通してー」
大庭布祐香 (2014) 「遠州方言のオノマトペ」
坂本百華 (2014) 「couldを含む文・発話の解釈プロセス」
柴田紗希 (2014) 「分詞構文の表現機能―Charlie and the Chocolate Factoryの事例を通して―」